ラムジェットエンジンについて
1、ラムジェットエンジンとは?
ジェット・エンジンで,飛行速度がマッハ3〜4程度に達すると,ラム圧だけで十分な圧縮圧力が得られるため,コンプレッサーとタービンが不要になる。この原理を応用して,超音速飛行専用に開発されたもので,空気取り入れ口(インテイク),燃焼室,排気ノズルのみから成る導管型の簡単構造で、なおかつタービンなどの回転限界も関係なく出力を上げられるという非常に効率のいいエンジンである。
超音速で作動するラムジェットエンジンの場合、超音速の空気流をインテイクで亜音速まで減速した上で燃焼させる点が、スクラムジェットエンジンと異なる。
<マッハ数>・・・音速=速度÷音速
乱れの速度が音速であるから、物体の運動速度が音速に近づくほど圧縮性の影響が大きくなる。この影響の度合いを分かりやすくするために用いられる物体の速度と音速の比のこと。
↑ 速度域の定義
「図解入門 よく分かる航空工学の基本」監修 飯野明 P252
<ラム圧>
・奥が狭まっている形状の燃焼室に前進速力によって導入された空気が自然に圧縮されること。
<コンプレッサー>
・ 燃焼で発揮できるエネルギーは、費やされる空気の質量に比例する。そのため、燃焼サイクルの効率を高めて自立運転ができるようにそこで与えられた容積内で処理できる空気量を増すために圧縮をしなければならない。エンジンの入り口でこの働きをするのがコンプレッサーである。
トルクと馬力の違いは何です
↑ ラムジェットエンジンの構造
〔図解入門 よく分かる航空工学の基本」監修 飯野明 P286〕
2、ラムジェットエンジンの構造
ラムジェットエンジンで外観的に特徴的なのは、空気取り入れ口にあるスパイクと呼ばれる円錐状の物体である。スパイクの前後位置を制御することにより、先端部で発生した斜め衝撃波をエンジンナセルに接するように調整する。ここで発生する垂直衝撃波より後方では亜音速流れとなり、高圧状態となる。その空気を燃焼室に取り込み燃料を混ぜて燃焼させる。燃焼による圧力上昇はエンジン前方が衝撃波によって塞がれてしまっているため後方に向かってブラストとして噴出され、推力となる。
↓ 衝撃波の例。
A BC
・A、B:垂直衝撃波
*A→先端部で発生した斜め衝撃波をエンジンナセルに接することの意味
・C:斜め垂直波
〔ジェットエンジン 鈴木弘一 著 図5.1(a)(b)、図5.2(a) P71〕
<エンジンナセル>
空気抵抗を減らすだけでなく、エンジンが壊れたときに外に出ないようにするためのエンジンの覆いのこと。
(A) サイクル
フォードEAハヤブサ(それを修正する方法を頭の問題
ディフューザ1から2までは、流れは亜音速であり、断面積が拡大しているため、このディフューザ内で流れは減速する。(v₀>v₂)ここで、単位流量あたりの空気の運動エネルギーの差(v₀²/2−v₂²/2)は熱エネルギーの差に変換される。したがって、T₂>T₀となり、p₀からp₂に増加する。
理想的には、流体はもとの圧力まで膨張し、その結果、温度はT₃からT₄まで減少、運動エネルギーは(v₄²/2−v₃²/2)だけ増加し、T₃>T₂となる。
上図:T−S線図〔ジェットエンジン 鈴木弘一 著 図8.3 P154〕
圧縮過程0→2、膨張過程3→4 等エントロピー変化
* 等エントロピー変化
→エントロピーとは作動流体がある状態から別の状態にうつるまでの間に、それに接する物体から、熱という形でどれほどのエネルギーを受け取ったかを示す値である。等エントロピー変化というのは、断熱的に変化するばかりでなく、流体中における摩擦や渦による熱の発生や圧力損失がないことである。
よって、上図から3→4間のエネルギーの差は、0→2間のエネルギーの差より大きい。すなわち、ノズルの運動エネルギーの差は、空気取り入れ口の運動エネルギーの差より大きいのでv₄>v₀となる。
ゆえに、推力Fが生まれる。
(B) 性能
赤ちゃんG-SHOCK
燃料として、炭化水素燃料や水素燃料を使用すると燃焼生成物が高温で分解されてしまうため、燃焼ガス温度は約2500Kで頭打ちになる。下図は燃焼器出口温度を2500Kとした、ラムジェットエンジンの性能のグラフである。
マッハ数2〜5の範囲では高性能だが、低いマッハ数および5より高いマッハ数では、その性能は急速に低下することが分かる。
↑ 下図 〔ジェットエンジン 鈴木弘一 著 図8.4 P157〕
<example>
・J58エンジン
アメリカ空軍戦略偵察機LockheedSR―71BlackBirdに使用された「J58エンジン」は、飛行速度に応じてエンジンの形態を変化させ、亜音速から超音速までをカバーしている。亜音速時はバイパスフラップによりターボジェットエンジンに空気を取り入れて燃焼させ、推力をつくる。一方、超音速時はラムジェットエンジンとして動作し、スパイクを電子制御で前後させて飛行速度に応じて圧縮を得る仕組みになっている。
SR−71B →
Wikipedia「SR−71偵察機」より写真引用
↑ SR−71のJ58エンジンの構造
図解入門 よく分かる航空工学の基本」監修 飯野明 P287〕
3、ラムジェットエンジンの欠点
@ マッハ3から5程度の超音速飛行に向く出力特性を持っているが、作動域が狭く、設計速度以下では著しく効率が低下し、充分な推力を発生することができない。
(マッハ6以上では、燃焼性生物が解離するため、温度上昇が頭打ちになり性能が急速に低下してくる)
A 低空では空気が濃いために圧縮圧が高すぎて使用できない。
B 静止状態では動圧が発生しないため、推力を生み出すことが出来ない。そのため、設計速度域に到達させるための推進系が別途必要となる。
4、ラムジェットエンジンの用途
ミサイルなどの軍事兵器、マッハ3近くを飛行する軍用機などに導入されている。
・ ミサイル
巡航ミサイル、艦対空ミサイル、空対地ミサイル、艦対艦ミサイルなど
・ 軍用機
MiG-25 FOXBAD、SR-71 BLACK BARD などの超音速機
参考文献
・ジェットエンジン概論 J・A・ケルブロック著
・よく分かる航空力学の基本 飯野明 監修
・ジェットエンジン 鈴木弘一 著
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