色あし 原色をホワイトなどで薄めたとき、どんな色になるかが色あしである。原色の状態では色が濃いため、微妙な色の感じは分かりにくい。色あしで見るとそれぞれの原色の特徴がよくわかり、調色の役に立つ。塗料メーカーの原色表には100%の色とともに、必ずホワイトやメタリックベースで薄めたときの色あしの塗り板が添えられている。
色決め 吹き付け作業の中心となる工程。上塗り塗装では、まず全体を薄く、はじきの有無を確かめながら塗る「はじき止め」または「捨て塗り」と呼ばれる工程があり、そのあとで下地が透けなくなるまでしっかり塗り込んでいく。これが色決めである。塗色や塗料によって異なるが、シングルコート3〜4回、ダブルコートなら2回程度となる。色決めの後はムラ取りを行なって仕上げる。
色ずれ 新車の塗装は、カラーコードが同じなら、どの車も同じ色になっているはずだが、実際には塗料の納入時期、ラインの違い、気候条件などで色に差が出る場合がある。これが色ずれで、使用顔料や塗装方法などの違いで、ほとんどずれがない色もあれば、同じカラーコードでも4〜5種類ぐらいの違う色の車が走っている例もある。
補修用塗料メーカーでは、できるだけずれた色にも対応できるよう、計量調色の配合データを、ひとつのカラーコードに対して数種類用意することが普通になってきた。
色の属性 何か特定の色を表現する場合、「赤みを帯びた黄色」とか「茶色っぽい紫」などと言葉で表わしていては、人によってイメージする色はまちまちになる。これをある程度客観的に表現するために彩度、色相、明度の3種類の単位が用いられる。これが色の属性である。基準のとり方にはいくつかの方法があるが、我が国では1905年にマンセルによって考案され、1943年に修正された修正マンセルシステムがJISによって決められている。
<色相>は色の種類で、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、紫(P)を主要5色相とし、それぞれの中間色を加えた10色が基本となる。基本になる各色はさらに隣り合わせになる色との間で10種類に分けられ、1〜10の番号が付けられている。基本になる色の番号は5である。この方法では 数字と記号で色相が決定される。つまり純粋の黄緑は5YG、赤とだいだい色の中間は10Rか1YRの辺りという具合である。
<明度>は色の明るさを表わす。反射率100%の白から全く光を反射しない真っ黒までを9段階に分け、標準明度としている。実際には反射率100%や0%という色(を持ったもの)は世の中には存在しない。
<彩度>は色の鮮やかさである。色味が強いとか、冴えた色調というのは彩度に関係する。彩度ゼロは無彩色の白や灰色などで、同じ明度の灰色に比べて、どの程度色味があるかで最大14段階程度まで分けられる。この分類数は色相や明度によって異なる。
3種類の属性で色が決定されるということは、それぞれの属性をx,y,zの3次元座標に置き換えることができる。そうすれば様々な色は、色� �や彩度、明度によって立体的な位置が決まる。こうして作った立体モデルが<色立体>である。
色むら 吹き付けた塗料が均一に広がらず、ムラのある状態で塗膜になるトラブル。吹き付け方法が悪くて起きる場合と、塗料が変質していて起きる場合がある。ウレタン系塗料が普及し始めた頃、最初の捨て吹きでラッカー系塗料と同じように、バラバラと吹き付けるスプレーマンが時折いた。
これで生じたムラは、後の色決めやムラとりでもなかなか解消できなかった。ウレタン系塗料はラッカー系塗料に比べると、一度の吹き付けでの膜厚が大きく、ムラも極端になってしまうためだ。今ではそんなことをする人は少なくなったし、塗料の変質もほとんどない。塗料そのものもムラが出にくいように改良されている。ただしメタリック塗装でのメタリックの戻りムラは、まだまだ頭を痛めている人も少なくはない。
色やけ 塗装後長期間すぎて、塗膜表面が荒れたり、顔料の変質で色が変わってしまった状態。昔は新車塗装でも5年もすぎると色が浅くなったり、ムラになったりしたものだが、最近の新車塗装は5年や6年ではびくともしない。補修塗装もラッカー時代は、せいぜい1年でクリヤーが変色したり、赤系や黄色系の色が飛んだりして無惨な姿になったが、ウレタン系塗料が普及して以来そんなことも少なくなった。
ただし新車の色は、見た目では変化がないようでも、調色しようとするとカラーコードのオリジナルの色と若干違っている場合もある。標準的な計量調色では合わせられないが、同じカラーコードでも少しずつ違った色の配合データも増えており、カバーできる範囲も広がっている。
色分かれ 塗料中の顔料が均一にならず、塗膜の色がムラになった状態。充分に撹拌していない塗料を使ったり、塗料が変質している場合に起きる。よく似た言葉に色上り(のぼり)もあるが、こちらは調色した塗料の顔料の重さの差で、軽い顔料が塗膜表面に浮き上がってきて色が変わってしまうことをいう。
隠ぺい力 ボデーカラーによっては、何回塗り重ねても下地の色が透けて見える色がある。透明感の強い色で、赤や黄色などに多いが、これらは隠ぺい力の弱い色である。<とまり>が悪いとも言う。そんな場合、何度も何度も塗り重ねしていれば、塗料の使用量も多くなるし時間もかかかる。その上膜厚が厚くなりすぎれば、塗膜としての性能にも悪影響が出る。そこで、最初はよく似た色で下地を隠し、その上からぴったり合わせた隠ぺい力の弱い色を塗る、というテクニックが用いられる。また、同じ色を塗る場合でも、塗料によって隠ぺい力の強い弱いが出る場合がある。これは塗料によって顔料を含む量が違うせいだが、自動車補修用塗料では、あまり極端な差はなくなっている。
透明感が強く鮮やかな色彩のボデーカラーが増え� �いる。その種のボデーカラーは隠ぺい力の弱い色が多い。一般に塗料というものは、膜厚が薄すぎても厚すぎても必要な能力を発揮できないようになっている。新車の塗装でも下色を塗っている例もある。
ウエザオメーター 優れた性能の塗料でも、非常に長い間屋外に放置し、太陽光線の直射や雨風にさらされれば、いつかは光沢もなくなり、はがれ落ちいていく。ここまでどのくらいの期間が必要かは、塗料の種類や環境の条件によって異なるが、自動車用塗料では少なくとも数年はかかる。これらのことを短期間で再現するため、太陽光線や湿度などを人工的に集約して塗膜に与え、耐候性を判断するための装置がウエザオメーターである。太陽光線の代わりに紫外線を発する光源を使い、圧力をかけた水を噴霧して、1年間に塗膜が受ける影響を、10日程度で調べることができる。
ウエットオンウエット 塗装作業では、まだ乾燥しないで塗れたような状態にある塗膜をウエットと呼ぶ。先に吹き付けた塗料が乾燥しない間に次の塗料を吹き付ける作業がウエットオンウエットである。追っかけ塗りとも言う。主にメタリック塗装の着色層の上にクリヤーを塗るときに使われる。
ただし、着色層を完全に乾燥させてからクリヤーを塗ることはあまりない。時間を置いて溶剤を充分飛ばしてから(見かけはまだウエットだが)クリヤーを塗る方法に対して、あまり時間を置かないですぐにクリヤーに入る方法をウエットオンウエットと呼んでいる(どのくらい短ければそう言うのかは程度の問題)。
また、フッソ塗料など、クリヤーをクリヤーの上に塗り重ねる場合では、完全に乾燥硬化させてから次のクリヤー塗る方法と、下のクリヤ ーを塗ったすぐ後や少しだけ時間を置いてから、次のクリヤーを重ねる方法がある。こちらも後者がウエットオンウエットである。なおドライオンウエットとはあまり言わない。
ウォータースポット 塗膜上に白い斑点ができるトラブル。原因は乾燥不充分な状態で屋外に出し、雨や夜露に当たった、洗車などの水滴を塗膜上に残したまま、直射日光に当てた、などである。どんな塗膜でも、完全に硬化乾燥してしまえばそれなりの能力を発揮するが、乾燥不充分だと、たとえ最新のウレタン系塗料でも、ひ弱なものである。塗膜の性能は乾燥の度合いに応じて発揮される。
一般に60℃×40分とかで指定されているのはコンパウンド可能時間か屋外放置可能時間で、そこまでしっかり乾燥していれば外に出しても大丈夫である。しかし溶剤が完全に抜けて、塗膜の性能がフルに生きてくるまでには、ウレタン系塗料では2週間から1カ月ぐらいかかる。その間、自動洗車機にかけたり、質の悪いワックスを使うと、塗膜にダメージを与� �る場合もある。この辺りは納車時にしっかり顧客に注意しておくべきだろう。なお、自社で使っている塗料の乾燥段階に応じた性能は、塗装マニュアル類などで調べておきたい。
上塗り塗装 主にボデーの色彩を担当する塗装で、<トップコート>、<フィニッシュ>とも呼ばれる。一番上に塗ってある塗装という意味では、クリヤーしか含まれないことになるし、アンダーコートやシャシーブラックも、確かに一番上の塗装だが、ちょっと意味あいが違う。
上塗り塗装に使う上塗り塗料は、外観を決める性質を持っているだけに、ボデーショップにおいても特別扱いされがちだが、上塗り塗料が美しい色彩と光沢を発揮し、それを長く保つためには、しっかりした下地の存在が欠かせない。その意味では下地作業にも上塗り同様の注意深さとていねいさが求められるはずである。
新車の上塗り塗装には、約150℃の熱を加えて硬化させる焼き付け型塗料が使用されている。補修用はほとんどがウレタン系塗料で、中で も作業性の良い速乾ウレタンが数の上では多い。
鉛筆硬度 鉛筆には6BからB、F、HB、そして9Hまで、いろいろな硬さが揃っている。これを塗膜の硬さの判定に利用するのが鉛筆硬度である。計測では、力の入れ方で違う結果が出ないよう、専用の試験器もある。判定では、硬度の違う鉛筆で何度も塗膜を引っかき、隣り合った硬度で、2回以上傷のつくものと傷付かないか1回だけ傷付くような組合わせを捜す。そして傷付かなかった方がその塗膜の鉛筆硬度である。新車の焼き付け塗料は、鉛筆硬度でH〜2H程度、補修用上塗り塗料では、ウレタン系なら同等のH〜2H、ラッカー系塗料ではF〜H程度である。
オーバースプレー スプレーガンで吹き付け塗装した場合、吹き付けた塗料がすべて塗膜になるわけではない。塗装面に当たって跳ね返ったり、マスキングに付着したり、もっと広い範囲に飛び去ったりする。自動車補修のスプレーガンでは、実際に塗膜になる塗料は、吹き付けた塗料の半分程度とされている。塗膜にならず塗料が無駄に消えてしまう現象をオーバースプレーと呼んでいる。
黄変 塗膜の色が黄味を帯びてしまうトラブル。クリヤーや白系の塗膜に目立ち、太陽光線や高温の影響が原因である。昔のラッカー系塗膜は、太陽光の紫外線に弱く、ひどい場合は半年ぐらいでクリヤーが黄色っぽくなったり割れたりした。現在のウレタン系塗料では、耐候性が向上しているのでそんなことも少なくなったが、硬化不充分だったり、硬化剤の配合を間違えると、カタログ通りの性能が発揮できず、トラブルにつながることもある。なお、初期のウレタン系塗料では、硬化剤を入れると少し黄味が出たり、単体クリヤーだと黄変しやすいと言われたが、今ではそれも解消されている(はずである)。
可視光線 テレビやラジオの電波、乾燥に使う赤外線、目に見える光などは、すべて電磁波という言葉で総称される。そのうち目に見える部分が可視光線である。太陽はあらゆる波長の電磁波を発しているが、その量のピークは可視光線の辺りにある。これは偶然でも何でもない。太陽から出る電磁波の中で最も多い部分を感じるように、生物が進化してきたからだ。なお、波長で表わせば可視光線は約380〜780ナノメーターの間になる(1ナノメーターは百万分の1ミリ)。虹の七色でいえば、赤、橙、黄、黄緑、緑、青、紫の順に波長が短くなる。それ以上に波長が短くなると紫外線になって目に見えなくなる。また、赤より波長が長くなると、赤外線になってやはり目に見えなくなる。
カスタムペイント カーメーカーが採用していないような特殊な塗装を施すこと。1)一般的な補修用塗料を利用して特殊な塗装にする、2)塗料そのものに特殊なタイプを使う、3)ボデーに絵や図柄を描くなどの方法がある。1)では、例えばボデーの上から下まで色が徐々に濃くなっていくようなグラデーションペイント、ラインやストライブを入れる、木目模様にするなどが考えられる。2)はキラキラ感の強いフレーク状のアルミ顔料の入った塗料、何度も塗り重ねて深い色合いを出すキャンディ塗料、くもの巣状の模様になる塗料など、変わった塗料がいくつかある。多くは米国製である。パールも元々はカスタムペイントの人気者だったが、今では普通の塗装になってしまった。3)はブロックや炎などの単純な図柄から、バンの側面いっぱ� ��に派手な絵を描いたものまで、お好み次第である。単純なパターンなら普通のスプレーガンで塗装できなくもないが、複雑な絵になるとやはりエアブラシの出番となる。ボデーの改造にはうるさい日本の法規も、塗装となると特別な規定はあまりないから、わが国のカスタムカーは塗装に凝るのが主流になっている。ただしアニメやブランドマークなど、著作権の絡む図柄は、個人で楽しむならともかく、商品にすると問題になる可能性がある。ご注意を。
車の塗装の仕事を行う方法
カラーカード 新車のボデーカラーには、色ごとにアルファベットや数字を組み合わせた<カラーコード>が設定されている。ハイパーホワイトとかイリュージョンレッドなどの色名は、車種によって同じ色でも違っていたりするが、カラーコードは原則としてひとつの色にひとつ、つまりカラーコードを指定すればボデーカラーを特定できるわけだ。全カーメーカーが共通した基準でカラーコードを付けていればいいのだが、残念ながらカーメーカーごとの設定で、同じカラーコードでもメーカーが違えば色も違う。また、カラーコードは、車種型式やエンジン型式などを記入したモデルナンバープレートに表示されている場合が多いが、別の場所に表示しているメーカーもある。同じメーカーでも車種が違えば、カラーコード表示位置も違っている� ��合もある。
計量調色では、カーメーカーごとのカラーコードに応じて原色配合率が設定されている。カラーコードごとに、採用車種名、見本塗り板、その色に対応する原色配合表をセットしたものがカラーカードで、1枚当たり10色程度が掲載され、それがカーメーカーごとにまとめられて1冊の本になっている。<カラーチャート>とも呼ばれる。
カラーカードの塗り板見本は、そのカラーコードの新車塗装に合わせた色を、特殊な技術で紙の上に吹き付け塗装し、それを裁断して貼り付けたものである。印刷ではないから、ほぼ忠実に新車の色を表現している。この塗り板が<カラーチップ>である。
カラーカードは毎年増加する新色に合わせ、毎年発行されている。従来は塗料メーカーごとに作成されていたが、198 7年から日本塗料工業界が、カラーコード塗り板見本など、共通する部分をまとめて製作し、その裏面に原色配合表だけを、各塗料メーカーがそれぞれ印刷して配布するようになった。毎年2月頃に前年の新色を中心にまとめたものが発行されている。それ以外に、新車が出てすぐに作成される車種ごとのカラーカードや5年分程度をひとまとめにした大型本的なカラーコードは、とりょうめーかーがそれぞれ独自に発行している。
より調色の精度を向上させると共に、高度な技術が必要な微調色をなるべく少なくするため、ひとつのカラーコードに対して2〜3種類の塗り板を設定した(もちろんそれぞれの原色配合も含む)カラーカードもある。生産時期やラインの違いによる新車塗色の色フレ、経年による色変化も配慮されてお� ��、ますます便利になってきた。
輝度 単位面積当たりの反射光線の明るさが輝度である。つまり白っぽい色ほど輝度が高くなる。メタリックなどでわかるように、見る角度によって輝度は変化する。
キャンディカラー カスタムペイントに使われる特殊な塗料で、クリヤーに発色剤(トナー)が入っていると思えばいい。薄く何層にも塗り重ねると、透明感が強く、ちょうどキャンディ(あめ玉)のような色合いの塗装になる。基本はラッカー系塗料で、薄く薄く重ねても、10回以上塗ることもあり、厚膜になるので耐候性は良くない。ウレタン系クリヤーで同じものもあるが、一度の膜厚が大きくなるので、効果はやや落ちるようだ。
クリヤーに顔料を混ぜて塗装したものをキャンディカラーと呼ぶ場合もある。ホンダ車では、2輪車以来ときどきそんな色があった。トヨタと日産でもクリヤーに顔料を混合した塗装が採用されている。この種の塗色はキャンディカラーとはあまり言わず、単にカラークリヤー塗装などと呼ばれている。スープラの 3L2スーパーレッド、スカイラインのAN0スーパークリアレッドがそれである。
旧塗膜 補修塗装する場所の周辺またはその部分の塗膜。新車塗装ならいいが、1度補修してある塗膜だと扱いが面倒である。旧塗膜の扱い方は、新車塗膜はなるべくはがさず、補修塗膜はできるだけはがす、が基本になる。では新車塗膜と補修塗膜をどのようにして見分けるのか。まずシンナーで拭いてみる。これで色落ちするのはラッカー系の補修塗膜だけだが、硬化不充分の2液型塗料など、不完全な塗膜を見つけることができる。シンナーで色落ちするようなら、迷わずその部分をはがしてしまう。簡単な膜厚計を利用してもいいだろう。たとえば上塗り塗膜だけの膜厚を精密に測定できるような膜厚計は、かなり大げさな道具になるが、パテが入っているかどうか見分けるだけなら簡単なものでいい。また、補修する部分をはがす前に� ��#600ぐらいのペーパーで研磨し、80℃ほどの熱を加えてみるという手もある。ラッカー系塗膜なら、ペーパーがけで消えた光沢が、熱で再び戻ってくる。
補修する部分の周辺に錆が出ていたり、ブリスターやワレ、フクレなどのトラブル状態なら、たとえ新車塗膜でもはがしてしまわなければいけない。肌や光沢の具合で判断できるようなベテランなら、何もつけ加えるようなことはないだろう。
鏡面肌 従来、新車の焼き付け塗装の肌は、軽い規則的なデコボコがあるゆず肌になっていたが、1980年代後半頃から、新車と装の肌はつるんとした鏡面肌に変わってきた。より光沢を高め、外観を向上させるためである。これに合わせて補修塗装でも、表面を<鏡面仕上げ>することが求められる。もともとウレタン系塗料は鏡面肌になりやすく、焼き付けのゆず肌に合わせる方が難しかったが、新車の鏡面肌は、鏡面度が高く、速乾ウレタン塗料では、ポリッシュに工夫が必要になった。また、濃色系のボデーカラーが増え、磨き跡の問題や作業時間の点などから、磨き作業に頭を悩ます工場も増えている。吹き付け作業が雑だと、いくら磨いても鏡面肌にならない。肌作りは吹き付けの段階から考える必要があるだろう。
クリヤー� �ット 調合した原色にクリヤーを加えることをいう。主にソリッドカラーの調色に利用されるテクニックで、透明感の強い艶を出すときに使うテクニックである。
計量調色 塗料メーカーなどが作成した配合率に従って、原色を計量しながら調色するのが計量調色である。自動車のボデーカラーでは、メーカーごと、カラーごとにほぼカラーコード(ナンバー)が設定されている。新車発表時には、塗料メーカーは塗り板を元に、自社の上塗り塗料のどの原色をどんな比率で配合すれば同じ色になるかを分析し、原色配合データを作る。配合比率は重量比で示されるものと容量比で記されているものの2通りあったが、今では重量比が中心である。
計量調色に使うのが<計量調色器>で、簡単なものは単なるハカリと配合データの組み合わせになる。<計量カップ>には、PP製の使い捨てカップがよく用いられる。計量調色に使うのでそう呼ばれるが、カップで計量することはあまりない。計量するハ� �リの方は、電子技術の発達でずいぶん使いやすく精密なものが市販されている。重さが直接数字で表示される<デジタル計量器>が中心で、カップの容量を自動的に差し引きしたり、作る量にあわせて配合データの数字を読み換えるなど、計算機能も持っている。さらに配合データを記憶していて、ボタン操作で自由に呼び出せる便利なものもある。
新車の塗り板で配合データを作っても、その後の生産時期や経年変化などで色が違ってくる場合もある。そこで実際に走っている車の部品を集め、それに基づいて調色したデータをまとめているのが<実車調色システム>である。実車にできるだけ近い色とするため、同じカラーコードの色に2〜3通りの見本塗り板と原色配合が設定されているものも多い。
コンピューターで� �り正確な調色を実現しようとしているのが<測色調色システム>である。ボデーカラーの判定には光を当ててその反射光で色の特性を判別する<測色機>が用いられる。こうして判別された色の特性に最も近いボデーカラーが、本体のコンピューターや電話回線などでつながれたコンピューターの中から選ばれ、その原色配合が表示される。そのデータによって調色し、今度は作った色の試し塗り板を測色機で計測すると、元の色との違いが表示され、それに応じて微調整して色を近ずけていく。このシステムを使えば、経験や知識があまりなくても調色できるが、まだパーフェクトというわけにはいかず、色によってはうまく合わない色もあるようだ。ただしこのシステムを繰り返し利用することで、短期間に調色技術をマスターできる というメリットがある。
原色 ボデーショップでは40〜50種類ある上塗り塗料の色を調合し、車のボデーカラーにピッタリ合った色を作る。調合するオリジナルの色や塗料そのものを原色と呼ぶ。原色は1種類または複数の着色顔料が溶剤によって溶かされた樹脂の中に分散されている。メタリックベースやパールベースも広い意味の原色に含まれる。ただしそれらは着色顔料ではなく、メタリックベースでは様々な種類のアルミ片をクリヤー塗料に混ぜてある。パールベースは塗料の形をしたもの以外に、パウダー状のタイプも用意されている。
原色には一般用原色と調色用原色がある。一般用原色は単独で使っても問題のでない原色で、調色用原色は単独で使うと耐候性に弱く、色が薄くなったりする原色である。これらの区別や原色そのものの色、ホワイト� ��薄めたときの色、メタリックベースを加えたときの色などは、塗料メーカーが発行する<原色特性表>に記されている。また計量調色に使うボデーカラーごとの<原色配合率>、つまりどの原色をどのくらいずつ混ぜれば色が合うかについては<原色配合表>またはオートカラーカードに記されている。
コーティング 大雑把に言えば塗装のことだが、わが国では塗装そのものを指していうことは少なく、むしろ塗装以外で、塗装のようにボデーの表面に1層加えるようなものをいう。ワックスの効果が長持ちする表面コーティングやガラスに色を塗るガラスコーティング、その他諸々のコーティング剤が市販されている。
コート 単独で用いられることはあまりない言葉だが、関連する言葉をまとめて説明した方がよいので項目としている。
<ウェットコート>と<ドライコート> 作業上の用語は、同じ言葉でも地域や人によってずいぶん違う意味あいで使われていることがある。この言葉も抽象的な表現なので、いろいろな意味で使われるが、大きく分けると次の2通りである。まずシンナーを多く含んだ塗料を吹き付けること。たとえば仕上げ吹きやぼかし吹きでそれまで吹き付けていた塗料にシンナーを追加して吹く場合である。次に吹き付けられた塗膜の中に溶剤が多く残っている状態。どちらも同じような感じだが、たとえばシンナーの量が同じでも、乾燥の遅いシンナーを使うと、塗膜は「ウエット」になる。逆に塗料中のシンナーを少なくした� �、塗膜中の溶剤が少ない場合はドライコートである。どちらも極端になればまともな塗膜にはならず、ウエットではタレが生じ、ドライでは肌が悪くなる。塗装マニュアルでは、ドライ気味にとかウエット気味にとか指示しているが、これらはほんのひとさじ加減と心得ておこう。なお、溶剤の多い少ないに関係なく、未乾燥で濡れた感じの状態の塗膜を<ウエットフィルム>、乾燥硬化した塗膜を<ドライフィルム>と呼ぶこともある。
<シングルコート>と<ダブルコート> 一定の面積を塗装する場合、スプレーガンを端から端まで1回だけ動かして終わるのがシングルコートで、もう一度同じ場所に続けて吹き付けするのがダブルコートである。これは塗装マニュアルなどで指定されている2回塗りとか3回塗りの回数とは異� ��り、ダブルコートでも塗り回数は1回である。吐出量やシンナー希釈量の設定などにもよるが、特に指定なしで2回塗りとか3回塗りとかの指示がある場合、ダブルコートでの回数を示している場合が多い。
高級塗装 補修の場合も1種の宣伝文句として使われているが、よく話題になるのは新車塗膜の方である。新車塗装のバリエーションが増えだしたのは1980年代後半頃からで、パール塗装に始まり、新タイプの顔料が続々と追加された。加えて塗料そのものも改良され、肌の仕上がりはゆず肌から鏡面肌に変わり、見かけの光沢は増している。また、クリヤーも厚膜化、多層化された他、フッソや耐スリ傷性など機能性塗料の採用が増え、こうした傾向が新車塗装の高級化と呼ばれるようになった。この種の塗装は<高品位塗装>とも呼ばれる。新車塗装の動向は当然補修にも影響を与え、フッソや耐スリ傷性塗装に対応する補修用塗料や光沢や耐候性に優れているとされるアクリルポリエステル系塗料などが市販され、過去にないほど上塗り塗料の 種類が増えている。
光沢 滑らかな表面に当たった光は、ほとんどが同じ角度で反射し、ザラザラの表面に当たった光は、バラバラに乱反射する。反射した光が目に入る量は、当然滑らかな表面の方が多くなる。そうすると我々の目は滑らかな表面に光沢があると感じる。<艶>も同じような感じである。JISでは<光沢度>として表現し、光源からの光が表面に当たった角度(60度または80度)と同じ角度で反射した光の量を鏡面光沢度、同じ角度で反射した光の量と、角度をずらしたり広げたときの光の量との比率を対比光沢度としている。また表面に映る像の鮮明さで比較する方法もある。これらの光沢は、それぞれの方法に対応した<光沢計>で計測される。光沢計には角度の変えられる光源と光の量を電気に置き換える光電管が内蔵されている。なお光 沢のことは<グロス>とも呼ばれ、光沢計は<グロスメーター>と呼ばれることが多い。
ゴミ・ブツ 塗料中のゴミやホコリ、吹き付け作業中や乾燥中のゴミやホコリが残った欠陥塗膜のことをいう。ごく小さなホコリならコンパウンド磨きで、あるいは塗膜の上に出ている部分だけ削り取って、跡はポリッシュで修正できるが、完璧な塗装ブースやゴミのない環境はあり得ないから、ゴミやホコリはいつまでたっても補修塗装につきまとってくる。
混色 色を混ぜることが混色である。透過光による混色が<加法混色>で、色を混ぜれば混ぜるほど明るくなる。透過光を混ぜるとは、例えば色付きフィルムを重ねたり、カラーテレビなどがそれに当たる。これに対して<減法混色>は反射光による混色で、絵の具や塗料を混ぜるときがこれになる。色を混ぜれば混ぜるほど暗くなる。調色の時にはなるべく少ない色数で合わせないと、色調が暗くなってしまう。なお光の3原色(赤・緑・青)はすべて混ぜ合わせると白になり、これは加法混色、色の3原色(赤・黄・青)はすべて混ぜ合わせると黒になり、減法混色である。
三原色 適当な比率で混ぜ合わせれば、あらゆる色を作ることができるような、いわば基本になる三つの色。光の三原色と色の三原色がある。
<光の三原色>は、テレビの画面や色付き電球のように、自分で光を出す場合の三原色で、赤、緑、青の3色。すべてを同じように混ぜ合わせると白になる。<色の三原色>は、塗装や印刷物のように、反射した光が色になって見える場合で、赤、青、黄の3色。混ぜ合わせると黒になる。カラーテレビは光の三原色をブラウン管上で混ぜ合わせて、様々な色を表現している。カラー写真や印刷物は、色の三原色を利用している。
トップ10 carseats
色差計 色の違いを数値で表示する計測器。ボデーショップで使われる色差計は、コンピューターの記憶している調色配合データの中から適切なものを選び出し、その後は見本塗り板と実車のボデーカラーの色の違いを、4種類のデータで表示してくれる。
目標とする色に対して赤味と緑味のフレは凾=A黄味と青味のフレは凾aA明るさは凾kで表わされ、総合的には凾dとして示される。何度か測色と配合の調整を繰り返し、最終的に凾dが0.5以下だと調色はほぼOKとなる。ブロックでピッタリ合わせようと思えば0.3ぐらい、ぼかして塗るなら0.7まで大丈夫だとされる。ただし数値表現と実際の見え形には、やはり差があって、凾dが大きくてもあって見える色やその逆もあり、黙って測ればピタリと……という具合にはいかない。ただし微� �色の過程を数字で示してくれるため、調色を学ぶためには非常に有効とする声もある。主にパソコンや電話回線によるホストコンピューターとの接続によって利用されているが、高価なため、まだまだ普及は進んでいない。
下色 ボデーカラーの中には、顔料の性質などが原因で、何度塗り重ねてもプラサフの色が透けて見えるようなとまりの悪い色がある。そしてそんな色に使われる原色は、たいてい値段が高い。そこで、最初はよく似た色でとまりのよい色を塗っておき、そのうえから改めてピッタリに合わせた色で塗るというテクニックが用いられている。これにより、作業時間の短縮、材料費の節約、厚塗りしすぎることによる塗膜トラブルの回避、という三つの利益が得られる。この種のボデーカラーは赤系、黄色系でよくある。<カラーシーラー>、<共色塗装>とも呼ばれる。
下塗り塗装 金属面(鋼板面)に直接塗って、主に錆を防ぐ役割を持つ塗装である。プライマーやウォッシュプライマーなどがこれに当たる。主に新車塗装で使われる言葉で、新車ラインでは電着塗装が行なわれている。補修塗装には<下地塗装>という言葉があるが、これは上塗り以外の塗料を全てひっくるめた意味で、下塗りと中塗りのはっきりした区別はない。
しまり 感覚的な言葉だが、乾燥時の硬化の進み具合を表わしている。表面だけ乾いた状態の指触乾燥から完全乾燥までの間で、この時間が早ければ「しまりがはやい」、ぐっと硬度が増すようなら「しまりがよい」などと使われる。
条件等色 色は光があってはじめて目に見える。つまり光源からの光が何かに当たって反射し、その反射光が目に入って、そのものの色を感じるわけだ。そのため色の見え方は、光源に影響される。光のもとが変われば色が違って見えることはよくある。例えば極端な話、太陽光線の下では白く見えるものも、赤いライトに当てれば赤く見える。そこまで極端でなくても、太陽光線、月の光、水銀灯の光などを考えれば、それぞれで違って見えるボデーカラーは珍しくない。このように、光源によって色が違って見えることを光の<演色性>と呼ぶ。この性質は色の元(顔料)の性質によって差がある。
2色以上の色を比べたとき、ある条件ではほとんど同じ色に見えるのに、演色性の差から、光源が変わるとまるで違う色に見えるような組� �合わせが考えられる。こちらが条件等色である。例えば昼間の光の下で調色して色がピッタリあっていたのに、夜になって水銀灯の光を受けると、補修した部分が違う色に見える場合がある。これは新車塗装に使われている顔料と、異なる性質(演色性)を持つ顔料で調色したことが原因だ。こんなトラブルを防ぐためにも、塗料メーカーの調色データを利用することが大切である。調色データに従って原色(顔料)を選べば、条件等色の罠(わな)に落ちることはまずない。
スーパーカラー トヨタ系のソリッドカラーで、従来の色よりもさらに鮮やかさを増したボデーカラーがこう呼ばれている。カラー名称は白系ではスーパーホワイト、赤系ではスーパーレッドなどがあり、それぞれ登場時期によってT〜Wなど、同じ名前を区別される(カラーコードは異なる)。これらの色は特殊な塗装方法や塗料が用いられているわけではないが、顔料の改良や配合などで鮮やかさを強調している。補修では原色配合の工夫やクリヤーカットなどで調色される。
すかし 斜めから塗膜の色を見ることがすかしだと思っている人も少なくないが、実はそれは間違い。光が塗膜に当たった角度と出ていく角度が同じ状態で見えるのが正面色で、異なる角度で見えるのがすかし色である。昼間の太陽の位置が高いときの戸外では、塗膜にほぼ直角で見ると正面、斜めに見るとすかしになるが、太陽が低くなったり、別の標準光源を低い位置に置いているときは、その光源の位置によってすかしと正面は変わってくる。
メタリックカラーでは、メタルのならびの関係から、正面が明るくなればすかしが暗くなり、すかしが明るくなれば正面が暗くなるという場合が多い。
捨て塗り <捨て吹き>とも呼ぶ。吹き付け塗装で、一番最初に吹き付けるとき、塗料と塗装面をなじませるため、またハジキの有無を確かめるために薄くさらっと吹き付ける作業のことである。ただし、あまりバラバラ吹き付けるとムラになり、そのムラは最後までとれないこともあるから注意したい。
セッティングタイム 吹き付け直後の塗料は、盛んに溶剤が蒸発している。次の工程に進む前には、ワンクッション時間を置いて、溶剤をある程度蒸発させた方がいい。セッティングタイムは、吹き付けが終わって強制乾燥に進む間のワンクッションである。溶剤の蒸発が盛んなときに急に熱を加えると、溶剤が抜ける跡を塗膜が埋めきれず、ピンホールになって残ってしまう。そこまでいかなくても肌の状態が悪くなる。気温や膜厚にもよるが、吹き付け後10分も過ぎれば溶剤の80%近くは蒸発してしまうとされる。10〜15分程度おいてから熱をかけるのが安全だろう。塗料によってはそのまま放置するのではなく、やや低めの温度で予備乾燥することを指定している場合もある。
<フラッシュオフタイム>は、3〜4回に分けて吹き付ける時の吹き付け と吹き付けの間の時間である。日本語では<塗装間隔>。溶剤の蒸発は塗膜の厚みの2乗に反比例して早くなる。つまり膜厚が2倍になると、同じ量の溶剤が蒸発するためには4倍の時間が必要になるわけだ。あまり塗膜が厚くならない間に、少しずつ溶剤を蒸発させれば、結果的には作業時間も短くて済み、乾燥時のトラブルを防ぐこともできる。この時間は通常5〜10分程度だが、これも塗料や塗り方によって調整することになる。フラッシュオフタイムをしっかり取れば、セッティングタイムも短くて済むことが多い。
フラッシュオフタイムとセッティングタイムは、同じような目的で行なわれる。タイミングの違いだけなので、特に区別しないで言葉として使われることも少なくない。
全塗装 ボデー全体を塗装するのが全塗装である。補修する部分があちこちにたくさんあったり、元の色と違う色に塗り替えてしまうときはこれになる。1980年(昭和50年代)頃までは、新車塗装といえども5〜6年もすればずいぶん劣化した。そのため同じ長く車を乗り続ける人や中古車は、全塗装してボデーの光沢を取り戻していた。エナメル塗料による全塗装が流行したのもこのころである。その後ウレタン系塗料が普及して、ウレタンによる全塗装が行なわれていた時期もあったが、新車の塗膜性能の向上や塗装料金の上昇で、あまり一般的ではなくなってしまった。
層間密着性 下地と上塗り、メタリック層とクリヤーなど、塗膜と塗膜の間の密着性をこう呼ぶ。これが悪くなるとブリスターができたり、塗膜がシールを剥がすようにバリバリめくれる<層間はくり>が生じる。原因は足付け研磨の不充分、油分やワックスなどの付着、層間密着の相性の悪い塗料を塗り重ねたなどである。
素地調整 概括的に言えば、塗装しようとする面を塗装できる状態にする作業のことである。補修塗装では、パネルの鋼板面の錆を落としてプライマーを塗ったり、足付け研磨をすることがこれに当たる。
ソリッドカラー メタリックやパール塗装のように、上にクリヤーを重ねない、文字通り1枚もののソリッドな上塗り塗膜を持つボデーカラーがソリッドカラーである。以前は塗膜構成だけでなく、使用される原色(顔料)もソリッドカラー用のものだったが、メタリックカラー用の鮮やかな原色もソリッドカラーに使われるようになってきて、その意味の区別はなくなってきている。またソリッド塗膜の上にクリヤーを重ねた<2コートソリッド>もあり、アルミ顔料やパール顔料を含まないボデーカラーがソリッドカラーであるとも言える。
ダスティング 溶剤の蒸発速度が速すぎて、吹き付けた塗料が塗装面に届く前に乾燥硬化が進み、ホコリのようなつぶ状になって塗装面に付着するトラブル。気温の高いときにシンナーの選択を間違えたり、シンナーの比率が多すぎるときに起きる。ウレタン系の塗料では起きにくいが、ラッカー系塗料全盛時代には時折見られた。気温とシンナーの関係に注意することが大切である。起きてしまえばすぐにタッククロスで拭き取って吹き付けをやり直す。もちろん塗料の希釈率やシンナーの選び方に再考が必要だ。
タッチアップ 広い意味では補修塗装全般のこと。狭い意味では、ボカシを含めてパネル1枚の範囲内で収まるような狭い範囲の補修塗装のこと。狭い意味の方は<スポット塗装>とも呼ばれる。塗装範囲は損傷範囲の3倍程度になるため、スポット塗装の元々の傷はごく小さなものばかりである。
試し塗り 調色した塗料が実際の車のボデーカラーに合っているかどうか、違っているのならどう違っているかを確かめるために、まず小さなパネルに塗料を吹き付けることが試し塗り、または<試し吹き>である。そのための小さなパネルは<試し塗り板>または<見本塗り板>と呼ばれる。これらの小パネルは、なんでもかまわないが、ボデーに当ててあちこちから色を比べてみるため、扱いやすい大きさでないといけない。また表面の色も濃すぎると上に塗る色に影響する。白か普段使っているプラサフの色に近いものが便利だ。
試し塗りでは、後からパネルに塗るときと同じ条件で塗装しないと意味はない。つまりシンナーの希釈率、エア圧、吐出量などを同じにし、硬化剤を加え、メタリックやパールではクリヤーも塗装して、乾� �させてから色を比べる。見本板を強制乾燥するには<見本塗り板乾燥機>が用いられるが、吹き付けで使うのは見本板ブースではなく、<調色用ブース>になる。
たれ 塗料はできるだけ厚く塗り込んだ方がよい艶が出るが、塗りすぎると重みでタラタラとたれてくる。たれの起きる寸前まで塗料を塗り込むのがベテランの腕の見せ所とされているが、それでも時にはたれるときもあるようだ。塗料の重みが関係してくるから、ボンネットやルーフのような水平になっているパネルと、ドアやフェンダーのような垂直になっているパネルでは、たれないで塗り込める塗料の量も違ってくる。<流れ>と呼ぶ人もいる。
ちぢみ 塗った塗料の溶剤が下の塗膜を冒し、表面が細かいシワシワ状になってしまうトラブル。下の塗膜の硬化乾燥が不充分なときに起きる。<リフティング>とも呼ぶ。ラッカー系塗料とウレタン系塗料が同じように使われていた時代、このトラブルは塗装担当者の恐怖の的だった。ラッカー系塗料で補修した上に、ウレタン系塗料を重ねると、ちぢみが生じる場合が多かったからだ。また、初期のウレタン系塗料では、1度塗って何かの不都合が起き、もう一度その上から塗り直すと、ちぢんでしまうこともあった。硬化の状態が完全かどうかは、外から眺めるだけでは分かりにくいため、ベテランクラスにとっても起きるか起きないかの判断が難しい。危なそうなときには2液のウレタンプラサフでカバーしてしまえばほぼ安心である。� ��修のやり直し場合は、最初の塗膜に熱を加え、しっかり乾燥させてから塗り直すことが大切である。
パテは薄い部分ほど乾燥が遅く、不注意な作業では、周囲のフェザーエッジの部分が完全に硬化しない間に次の工程へ進んでしまう。硬化不充分なパテ、ラッカープラサフ、ウレタン系塗料と重ねると、パテの周囲の部分にチヂミが生じ、パテを塗った範囲がくっきり浮き出てしまう。これが<パテ跡>または<パテ跡のちぢみ>である。
チョーキング 塗膜が劣化して艶を失い、表面が粉を吹いたような状態になるトラブル。現在の塗料では、きちんと塗装していればほとんど生じることはないが硬化剤の配合を間違っていたり、耐候性の悪い顔料を含む原色を多く使って調色すると危ない。塗装後すぐにわかるようなトラブルではなく、かなり時間がたってから起きるため、塗膜だけでなく人間同士のトラブルにもなりやすい。
調色 色の数は無限にあるが、塗料の色数はそうもいかない。数種類の塗料を混ぜ合わせて、必要とする色を作り出す作業が調色になる。自動車のボデーカラーは数百種類あるが、ボデーショップでは、約50種類程度の原色を混ぜ合わせることで、必要な色を作り出す。昔は作業者の勘と経験だけで行なわれていたが、今では新車の発売や新色の発表ごとに、塗料メーカーは自社の塗料による原色の配合データを用意し、それに基づいた計量調色が行なわれるようになった。<色合わせ>とも呼ばれ、カタカナでは<カラーマッチング>とか<チンチング>などと表現される。
ツートーンカラー 2色で塗り分けたボデーカラーがツートーンカラーである。同色系、メタリックとパールなど、組み合わせはいろいろで、上級車種にオプションとして取り入れられていることが多い。塗装の塗り分けではなく、バンパー、サイドガーニッシュの色を変えてツートーンカラー風にした車種もある。もう1色増えて3色になったり、2色でも上部、中央、下部の3段階に塗り分ければ<スリー(3)トーンカラー>となる。さすがに一般の乗用車では例は少ないが、ワンボックスのワゴンやマイクロバスでは珍しくない。
この種の塗装では補修料金が問題になりがち。単純に2倍するわけにもいかないし、補修部位やどんな料金体系(指数)を利用するかでも変わってくる。
電着塗装 塗料を入れたタンクなどに、塗装するものを浸け、塗料と塗装するものの間に電気を流して塗料を付着させる塗装方法。ED塗装とも呼ばれ、自動車では新車ラインの下塗り塗装に用いられている。塗料の無駄が出ず、塗装物(ホワイトボデー)の隅々にまで均一な塗膜を作ることができる。
ボデー側をプラスにして電流を流すのが<アニオン電着塗装>で、ボデー側をマイナスにして電気を流すのが<カチオン電着塗装>になる。アニオン式では、ボデー側の金属成分が塗料注に少し溶け出すため、塗膜性能はカチオン式の方がよくなる。もちろん新車ラインではカチオン電着が主として用いられている。
塗装するもの全体を塗料に浸す塗装は<ディッピング>と呼ばれる。ED塗装のEDは、Electro Dippingの略でもある。
塗装条件 スプレーガンによる吹き付け塗装には、非常に微妙な要素がある。吹き付け作業のテンポや距離、シンナーの薄める量などによって色の見方や肌の状態が変わってくることも少なくない。このような仕上がりに影響する要素が塗装条件である。様々内容があるが、塗料側ではシンナーの希釈量、粘度、塗料の種類(ウレタンかラッカーかなど)、スプレーガンではエア圧、吐出量、パターン、吹き付け作業ではガンを動かす速度、塗装面との距離、その他の面からは気温、風速、湿度などが関係してくる。
フォードフォーカスのクラッチを調整することができます
塗着効率 吹き付けた塗料が、どの程度塗装する面に付着するかを比率で表わした数字。これが悪いと塗料の無駄が多くなる。ボデーショップで使っている一般のスプレーガンの塗着効率は約40%程度。つまり吹き付けた塗料の半分以下しか塗膜にならない、残りの半分以上ははブースの壁に付いたり、床ピットから吸い込まれてフィルターを塗装していることになる。これが低圧高吐出量のHVLPになると60〜70%に上昇し、静電エアレス塗装機では80%を越えるものもある。では塗着効率100%の塗装機はあるのだろうか。ある。それも身近なところに。ハケやローラーがそうである(扱いが下手だと多少こぼれるが……)。
ドライスプレー 塗膜トラブルとしてのドライスプレーは、溶剤の蒸発速度が速すぎて、塗膜の表面が平らにならない間に硬化乾燥してしまい、表面がざらざらで肌も艶もまともでなくなった状態のこと。吐出量を絞りすぎたり、エア圧が高すぎると起きやすい。程度が軽ければ、表面を研磨ポリッシュして修正できるが、ひどくなるとやり直しである。なおドライコートと混同して用いられていることもある。
中塗り塗装 主に塗装面のデコボコを埋めて平坦にし、上塗り塗料の土台となる塗装。新車ラインでは静電塗装され、焼き付け乾燥後、表面が研磨される。これも新車塗装で使われる言葉で、ボデーショップでは下塗りと中塗りの区別はあまりない。下塗りのプライマーと中塗りのサフェーサーの能力を兼ね備えたプライマーサフェーサーが利用されているためだろう。
肉持ち 吹き付けられた塗料は、溶剤が蒸発するので、その分だけ徐々に膜厚が減っていく。吹き付け直後の塗膜中に溶剤分が多いと、乾燥するまでの膜厚の減少量は大きいが、溶剤分の少ない塗膜なら、変化は少なくて済む。このように、吹き付け直後と乾燥後で塗膜の厚みが余り変化しない塗料を肉持ちがよいと言っている。例えばラッカー系塗料とアクリルウレタン系塗料では、シンナーの希釈量がずいぶん違う。シンナーの希釈量が少なくて済む塗料は肉持ちがよい塗料になる。
塗膜になったときに、肌の感じがポッテリしていて、いかにも膜厚が充分に付いているような感じを、肉持ち感がよいとも言う。これは感覚的な言葉なので、説明は難しいが、ベテランクラスのスプレーマンは肉持ち感ある仕上がりを好む。
ニ� ��シ吹き メタリックやパール塗装で、着色層の塗料とクリヤーを混ぜて吹き付ける工程がニゴシ吹きである。ラッカー系クリヤーの場合、クリヤーだけを単体で吹き付けると、耐候性などに問題が出やすかった。そのためメタリック塗装の仕上げでは、1回目は1対1、2回目は1回目の残りの塗料に同じ量だけクリヤーを加えるなど、ニゴシ吹きの工程を欠かすことはできなかった。ウレタン系塗料では、クリヤーを単体で吹いてもあまり問題は出ないが、ムラ取りやボカシ部を目立たなくするため、1回目のクリヤーはニゴシ吹きで吹き付ける場合がある。3コートパールのボカシ吹きでは、ベースコートの塗料とパールを混ぜてニゴシ吹きする方法もある。
にじみ 旧塗膜や下地の色が溶けだし、上塗り塗膜中ににじみ出てその部分だけ色が変わるようなトラブル。カタカナで言えば<ブリード>になる。旧塗膜や下地の塗膜性能が不充分な場合に起きる。また看板文字の上から直接塗装したり、ピッチやアスファルトが付着している上に塗装すると、にじみが出る。
ネタ お寿司やさんでは、寿司飯の上に載っている刺身などのことだが、塗装の世界では吹き付けるために用意した塗料のこと。調色を済ませ、硬化剤とシンナーを加え、後は吹き付ければいい、という状態がネタである。
粘度 液体の流れにくさを表わすのが粘度である。水飴のようにネバネバトロトロしていると粘度が高く、水のようにサラサラなら粘度は低い。気温が同じ場合、吹き付けの時の塗料の粘度は常に一定にしておく必要がある。粘度が変われば、仕上がりの肌に影響が出るからである。
塗料の粘度を計測するためには、底に穴が開いた小型のカップを利用する。粘度を計測するためのカップは<フォードカップ>と呼ばれ、底の穴の大きさで数種類設定されているが、日本ではその中から穴の直径が4oのbSがよく用いられている。なお、カップの容量は100tになっている。市販されている<粘度計>は、フォードカップに相当するサイズで作られている。
塗装現場で、粘度計やフォードカップを使って粘度を計測している姿は珍しくな い。しかし正式な測り方はあまり知られていないようだ。用意するものはフォードカップの他、ガラスのような透明で平らな板を1枚(1辺は50p以上)、秒を測るためのストップウォッチ。
まず底の穴を指でふさいでおき、カップの中にやや多めに塗料を入れる。次にガラス板をカップの上に置き、横にズラすようにしてふたをする。この時、ガラス板と塗料の間に泡が入らないようにする。この状態で穴を押さえていた指を離す。塗料はまだ流れ出さない。その後でカップの上のガラス板を、少しずつズラして取り去ると、塗料が流れ落ち始める。塗料が流れ出せばストップウォッチをスタート。カップ内の塗料がほぼ流れ落ちて糸のようになって、それがはじめてとぎれた時点で計測をストップする。この間の秒数で粘度を表わ� �ている。
同じ塗料でも温度によって粘度が変わるため、塗料の粘度は計測に使ったカップの種類、気温、秒数の組み合わせで表現されている。例えば「フォードカップbS、25℃、19秒」という具合だ。
パール塗装 着色層の中に、パール顔料を混ぜて塗装したボデーカラーのこと。<パール顔料>は、薄い半透明の膜を何層にも重ねた構造になっていて、表面は酸化チタンでコーティングされている。パール顔料に当たった光は、顔料の表面や内部の半透明の膜で、ある部分は反射し、ある部分は通り抜け、様々な色になる。この反射や通り抜けの具合は、見る角度によってによっても変わるので、変化のある複雑な色彩が生み出される。この顔料は<マイカ>(雲母)と呼ばれるため、パール塗装は<マイカ塗装>、パール顔料は<マイカ顔料>とも呼ばれる。表面のコーティングにより、一般的な白色パール顔料、酸化チタン層が厚い干渉パール顔料、酸化チタンの上に酸化鉄がコーティングされた着色パール顔料の3種類が中心で、その他表面� ��銀メッキされた銀色マイカ(トヨタ)、酸化チタン層をさらに厚くしたファントムパール顔料(三菱)など、カーメーカーによっても独自の工夫が施されている。
パール塗装には、3コートパール塗装と2コートパール塗装の2種類がある。<3コートパール>は、通常の着色顔料からなるベースコート(着色層)、パール顔料だけかわずかの着色顔料を加えたパール層、クリヤー層の3層構造になっている。主に白色顔料が用いられ、上級車種に採用されている。<2コートパール>は、メタリック塗装と同じように、着色顔料にパール顔料を混ぜた着色層にクリヤー重ねたもので、登場以来5年ほどの間にメタリックより色数が増えてしまった。メタリックより落ちついた色調になり、ムラが出にくいのが特徴である。2コー トパールの着色層に、メタリック塗装用のアルミ顔料を加えたボデーカラーもある。<パールメタリック塗装>とか<マイカリック塗装>と呼ばれるが、アルミ顔料の含まれない2コートパールと特に区別されることは少ない。
パール顔料は、クリヤーと混合させた液体やパール顔料だけを封入したパウダータイプ、泥状に練り合わせたコンクタイプなどの形で市販されている。原色ラインの中では<パールベース>または<マイカベース>と呼ばれる。
ハイレフコート 塗料の膜厚を厚くすれば艶はよくなるが、少しでも厚すぎると重みでたれてしまう。そして垂直面は水平面よりたれやすいので、限界まで塗り込むとどうしても差が出てしまう。マツダが上級車種に採用しているハイレフコートは、より厚塗りができるように塗料を改良した上、水平面と垂直面の差を出さないよう、ボデーを回転させながら焼き付け乾燥させている。ちょうど肉の塊を串に刺して、火の上で回転させながら焼くバーベキューのような方法だ。これによって同じボデーカラーでも、まるで違う色に見えるほど仕上がり感は向上している。さらに後になって耐スリ傷性の機能を持つ塗料が採用されるようになり、<高機能ハイレフコート>にグレードアップした。ボデーショップではそんなマネ(乾燥中のボデーを回転させ� ��)はできないから、補修の難しい塗装のひとつになっている。
はじき 吹き付けた塗料が塗装面に上手く付着しないで、部分的にはじかれたようになり、班点状のへこみが生じるトラブル。<クレータリング>、<フィッシュアイ>などとも呼ばれる。塗装面にワックスやシリコン、水分油分など、塗料と相性の悪い成分があると生じる。吹き付け前の清掃を念入りに行なうのが解決方法になる。特にモールぎわやドアハンドル、パネルのすき間はワックス分が残りやすい。またシリコンの入ったワックス類や艶出し剤は工場で使わないようにするべきだ。注意したいのはモップやマット類で、ハジキの急増に悩まされて、調べてみると事務所の足拭きマットが原因だったという例もある。
初期のウレタン系塗料ははじきに敏感で、はじきをとめる添加剤<はじき止め>がよく用いられた。はじき止め� �成分はシリコンが中心で、いわば毒をもって毒を制するという方法。そのため、最初にはじき止めを使えば、それ以降の塗り重ねにもはじき止めを加える必要があり、周囲に飛び散る塗料ミストは、別の塗装のハジキの原因ともなった。しかしその後の塗料の改良で、はじき止めの使用もほとんど使われなくなっていった。
肌 吹き付けた塗膜の表面の状態のこと。吹き付け直後は<濡れ肌>なので、主に乾燥後の表面のことをいう。肌は塗料の種類や吹き付け方によって変化する。新車の焼き付け塗料の肌は、小さく緩やかなデコボコがあり、ミカンの皮のようなゆず肌になっていたので、補修塗膜もそれに合わせた肌が作られていたが、1980年代後半頃から表面がつるつるの鏡面肌となり、補修側もそれに対応して変わっていった。調色で苦労して色をピッタリ合わせても、肌の調子が合っていないとよい仕上がりとは言えない。
熟練した技術者なら、肌の調子はエア圧やシンナーの希釈量、ガン距離や運行速度によってコントロールできる。乾燥後のポリッシュで肌を合わせることも、極端にひどい仕上がりでない限り可能だが、ポリッシュに余分な時� ��がかかるため、できるだけ吹き付けで肌を合わせる方がいいとされている。
パターン 補修塗装に使うスプレーガンは、吹き付けた塗料が楕円形の範囲に広がって塗装面に付着する。この楕円形をパターンまたは<スプレーパターン>と呼ぶ。パターンはスプレーガンの空気キャップの角を縦にすれば横長に、横にすれば縦長に変化し、パターン調整ネジによって円形から細長い楕円形状まで調整することができる。通常は縦長パターンで吹き付けられることが多い。
パターンの楕円形状の両端は、中央部に比べて塗料の付着量が少なくなるため、均一な塗膜を作るためには、隣り合ったパターンの端同士を重ねて塗装する必要がある。これが<オーバーラップ>で、<パターン重ね>とも呼ばれる。どの程度パターンを重ねていくかは、塗料や塗装の種類、作業者の技術などによって異なるが、一般的には3分の1� �度重ねるのがよいとされている。たっぷり塗り込んで膜厚の大きな塗膜にする場合は、2分の1重ね、3分の2重ねなどのテクニックも用いられるが、タレやすくなるので慣れない作業者には向いていない。
スプレーガンで吹き付けている状態を真横から見たとき、普通は直線的に塗料が広がり、塗料の通る範囲は三角形になる。これに対して、塗装面に近い側がすぼまって、ちょうどチューリップの花のような形にコントロールされているスプレーガンもある。これが<チューリップパターン>で、場所による塗料の付着量のムラがすくなるため、狭い範囲の補修塗装に向いている。
パッケージカラー 補修塗装では、数多くの原色の中から必要な原色を選び、それらを混ぜ合わせて必要なボデーカラーを作るのが一般的である。しかし最初から新車の色に合わせて調合し、缶に収めている補修塗料もある。これがパッケージカラーで、一見便利そうだが、新車のボデーカラーに色フレや変色があると、そのままでは使えないから結局同じことである。そのせいか日本ではあまりパッケージカラーは利用されず、原色からの調色が中心になっている。しかし新車塗膜の性能向上で変退色が少なくなっており、色フレのあるボデーカラーも限られたものなので、作業時間短縮や塗料のロスを減らすため、パッケージカラーを見直すべきだという声もある。
標準光源 ライトや電球などの光源は、主にその温度によって色の特性が変わるため、光の特性は温度によって表現される。それが<色温度>である。色温度が違えば、光の色は同じように見えても、その光を反射した色は違って見えることがある。昼間の太陽光線の光に、できるだけ近い特性を持たせているのが標準光源である。標準光源を使えば、天気の悪い日や夕方から夜にかけた時間帯でも、昼間と同じように調色することができる。
標準光源は、どんな状態の光を再現しているかでいくつかに分けられている。まず標準光Aは、他の標準光の元になるもので、2,854°Kの色温度を発するガス入りタングステン電球である。標準光Bは、太陽の直射光線を再現したもので、標準光Aも電球に特殊なフィルターを被せて色温度を4,870°Kに している。標準光Cは同じようにして色温度を6,740°Kに設定してあり、これは6月上旬の快晴の午後1時頃に、太陽光線と青空の光が混合して北窓から入ってくる光に合わせてあるそうだ。単に標準光源と言えば、標準光Cを発するものを指すことが多い。なお、色温度は絶対温度(°K)で示される。その数字から273を引けば、ほぼ摂氏(℃)の温度になる。
昼間の太陽光線の光を再現している蛍光灯もある。これは蛍光灯の管の内側に塗ってある薬剤の工夫で、太陽光線の光を再現している。
表面処理 露出された鋼板の表面を錆から守るとともに、次に塗る塗料の密着力を助けるのが表面処理または<金属面処理>の工程である。新車ラインの場合は<化成処理>と呼ばれる。 鋼板の表面処理には、主に<リン酸亜鉛処理剤>が用いられる。ボデーショップで用いられるものは<プレコートメタル>、<メタルコンディショナー>などと呼ばれている。 処理方法は、まず原液を水で薄め(希釈済みの製品もある)、鋼板の表面に刷毛塗りする。半乾き状態になれば、処理した部分を水洗いして、余分の処理剤を洗い落とす。これで鋼板の表面には、防錆効果を持ったリン酸亜鉛の薄い皮膜ができる。製品によって多少異なるが、標準的な処理はこのぐらいである。注意したいのは処理後で、リン酸亜鉛の皮膜は細かい穴が無数に開い� ��おり、長く放置すると逆に錆を呼びやすくなる。できるだけ早く次の工程に進むべきだ。
微粒化 補修塗装に使うスプレーガンは、圧縮空気と塗料を激しい勢いで衝突させ、その時の力を利用して塗料を細かい粒に分解し、霧状にして吹き付けしている。これがエアスプレーガンによる塗料の微粒化方法である。塗料の粒は細かければ細かいほど、均一に塗装面に付着し、滑らかな肌を作る。粒が粗ければ肌も粗くなる。その点では自動車補修に使うスプレーガンは、最高水準に近いものが使用されている。
圧縮空気の勢いが強い、つまりエア圧が高いか空気の量が多いほど、微粒化はしやすくなるが、自動車補修用のスプレーガンは、低圧低吐出量でも微粒化に優れているのが特徴である。塗装用機器には様々なタイプがあり、塗料のロスの少なさや使い勝手などでより優れたものもあるが、微粒化の点でエアスプレーガンに勝� �ないため、ボデーショップではほとんど使われていない。
拾い塗り 上塗り塗装で塗装面全体を塗る前に、例えばプラサフの入っている部分だけとか仕上げパテを塗ってある場所だけとかいう具合に、部分的に吹き付けする工程を拾い塗り、または<拾い吹き>と呼んでいる。塗装面の状態が異なれば、上に塗る塗料にも多少影響は出る。その影響を防ぐために行なわれる。
ピンホール 塗膜中の溶剤の蒸発速度が適正だと、溶剤の蒸気の通り道は周囲の塗料がすぐに埋めるので、表面はきれいなまま仕上がる。しかし急激に大量の溶剤が蒸発すれば、塗料は溶剤の抜けた跡を埋めきれないままに硬化し、表目には細かい穴が無数に残る。これがピンホールや<ワキ>と呼ばれるトラブルである。原因は吹き付け直後に急に温度を上げた、塗膜中に残っている溶剤が多すぎる、厚塗りしすぎなどである。溶剤の蒸発量は塗装直後が最も多く、次第にゆっくりとなっていく。吹き付けと吹き付けの間を5分程度空け、溶剤を蒸発させながら塗り重ねれば、塗り終わったときに塗膜中の溶剤量が多すぎるのを防ぐことができる。また吹き終わりでそのまままたは気温より少し高い程度の温度で5〜10分空ければ、その間に大量の� �剤が蒸発するので、後は必要な温度に上げて短時間で硬化乾燥させることができる。急がば回れである。なお塗装間隔の空け方は、塗料の種類や塗装方法などによっても異なる。
フェザーエッジ 補修のために塗膜をはがし、鋼板をむき出しにした部分と周囲の旧塗膜との間は、塗料の厚みの分だけ段差ができている。この段差はできるだけ滑らかな斜面になっている方がいい。ていねいな研磨作業によって作られた、補修部と旧塗膜の間の滑らかな斜面をフェザーエッジと呼ぶ。上から見ると中塗りとした塗りの層が少しずつ顔を出し、境界面がぼかされている。鳥の羽のようにも見えるからこの名前が付いたといわれている。
フェザーエッジは、どこかの工程で一度に作るのではなく、塗膜はがし、パテ研磨と連なる研磨工程で、少しずつ範囲を広げて滑らかなものにしていく。そのための作業が<エッジ落し>または<段落し>である。
ブラッシング 塗膜中に空気中の水分が入り込み、白っぽくなって光沢がなくなるトラブル。<かぶり>、<白化>、<くもり>などとも呼ばれる。
溶剤が蒸発するときの気化熱で温度が下がり、空気中の水蒸気がつゆになって塗膜に取り込まれる。夏に冷たい飲み物を入れたコップのまわりにつゆが付くのと同じ現象である。ガラスのくもりは拭けばきれいになるが、塗膜のくもりは一度完全に乾かして、それからくもっている場所の塗膜をはがしてやり直しだ。溶剤の蒸発が急すぎるのが原因だから、気温に合わせたより蒸発の遅いシンナーを使わなくてはいけない。周囲の温度を上げる方法もある。温度を上げると湿度は自動的に下がり、つゆが付きにくくなる。ただしくもりが出るほど湿度が高いときは、たいていは暑い時だから、それ� �上温度を上げるのは……。
ブリスター 塗膜のごくせまい範囲が、吹き出物のようにプックリふくれてしまうトラブル。原因が単純でなく、いろんな要素がからみあって起きる上、鋼板面、下地の各層など、どこでも発生する可能性がある。そのため、起きてしまえばすべての塗膜をはがして鋼板面からやり直ししなければいけないが、同じような作業を繰り返したのでは、ブリスターもまたもう一度発生してしまうこともある。非常にやっかいなトラブルである。
塗膜と塗膜の間や塗膜と金属面の間に密着不良があると、それらの間にごく小さなすき間が生じ、そこに水分が入る。水分はやがて蒸発して水蒸気になるが、水が水蒸気になるときは、体積が約1,000倍にふくれるため、すぐ上の塗膜を持ち上げてブリスターになる。これが発生のメカニズムである。元になる 密着不良は、あらゆる原因で生じる。塗装面についていた小さなゴミや油水分、ワックス、水分、パテやプラサフの耐水性、溶剤の抜けの悪さ……。要するに塗装面は充分に清掃してきれいにし、質のよい塗料とシンナーを使えばいい、ということだが、これでは答えになっていないようだ。ブリスターには、それだけで本が1冊できるほど、複雑な要素が含まれている。
ブロック塗装 ある特定のパネルの1部ではなく、そのパネルの全面を塗装するのがブロック塗装になる。隣のパネルは塗装しないため、調色で色をピッタリに合わせる必要がある。ぼかしをしないのが基本なので、少しでも色が違っていれば、すぐにわかるからだ。もちろん高度な調色技術が必要になる。そこまでいくのはなかなか難しいから、補修するパネルはブロック塗装し、そこから回りのパネルにぼかし塗りするのが<ブロックぼかし塗装>である。塗装範囲はかなり広くなってしまうが、調色の精度はやや甘くても、境目が目立つようなことはない。なお、2液のウレタンプラサフやフッソクリヤーは、原則としてブロック塗装が条件付けられている。これはそれらの塗料はぼかし塗りしないで、パネル全面に塗りなさいという意味。例え� ��フッソ塗装では、着色層はぼかしで仕上げても、クリヤーはそのパネルの全面に塗る。
ブロンジング 長期間太陽光線にさらされた塗膜中の顔料が変化し、玉虫色の金属光沢を発するようななった状態。有機系の赤、青、緑色の顔料で生じる場合がある。顔料の選び方を間違ったり、塗装作業や塗料の不具合で、塗膜が本来の性能を発揮していない場合に生じるが、何も問題ない塗膜でも、10年もそのままにしておけば、色によっては発生する可能性がある。塗膜トラブルというより、塗膜の劣化現象のひとつである。
雰囲気温度 5℃以下の気温では、溶剤の蒸発や塗膜の化学反応の進行は極端に遅くなり、まともなと操作業は難しくなる。塗装ブース内では、乾燥時の余熱や暖房で、極端に低い温度にはならないが、工場内はそうもいかない。よく行なわれるのは熱風ヒーターや赤外線ヒーターで、塗装する場所の気温を上げてやること。これは決して作業者が寒いからだけではなく、よい塗装仕上がりのためには欠かせない。塗装する場所の温度が雰囲気温度である。気温によるシンナーの選択も、もちろん雰囲気温度に合わせて行なう。暑い方も本当なら下げてやりたいところだが、寒すぎるよりもトラブルにつながることは少ないので、雰囲気温度はもっぱら上げる方が中心になっている。
ペーパー目 下地にペーパー掛けした跡が、上塗りを塗っても消えずに透けて見えるような状態。<ペーパー跡>とも呼ばれる。足付け研磨に使うペーパー番手が粗すぎると起きる。実際には透けて見えるだけでなく、上塗り表面も研磨跡のようにデコボコになっている。これは粗いペーパーの研磨跡に溶剤が過剰に入り込み、下地や旧塗膜を冒して研磨傷を広げるためである。そのため、上の塗料で埋めようと重ね塗りしても、溶剤量が増えるから傷を広げるばかりで、決して消すことはできない。足付け研磨は研磨は次に塗る塗料に応じたペーパー番手を使うべきである。この種の傷は濃色ほど目立ちやすいため、上塗りの色によってもペーパー番手を変える必要がある。また、かろうじて消せる程度のペーパー傷でも、溶剤の量が多かったり乾� ��速度が遅いと、ペーパー目が目立つようになる場合もある。
変色 塗膜の硬化乾燥が不充分だったり、硬化剤の配合比を間違えるなどして、塗膜の性能がきちんと発揮されていないと、短い期間で塗膜が劣化して、塗った時と違う色になってしまう。しかし無限の光沢が約束されている塗料があるわけじゃなし、10年以上過ぎれば、たいていの塗料は、程度の差こそあれ、艶を失ったり変色することも少なくない。
方向性 メタリックやパール塗装の仲間では、アルミやパールなどの顔料の並び方によって、正面すかしなど、見る角度によって色が違って見える。ソリッドカラーでも、顔料の形状が見る角度によって大きく異なる場合は、色の見え方も変わってくる。見る角度によって違って見える色は、方向性のある色である。極端な差がある場合は、方向性が強いという。もう少し専門的な言葉に直せば、色や顔料の<フリップフラップ性>、<フラップ特性>などと表現される。これは塗装された塗膜の色について言われるときと、顔料そのものの性質を示している場合のふた通りがある。調色の時、見本板とボデーを色々な角度から眺めるのは、方向性に問題がないか確かめるためでもある。ボデーカラーと調色した色の方向性が異なれば、正面から� ��たときは同じ色でも、斜めから見ると別の色に見える場合があるからだ。
防錆処理 溶接部などに、後から錆が発生しないように行なう修理作業に含まれる内容と、海岸部や重工業地帯など、錆が出やすい地域で、新車または使用中の車の防錆能力を向上させるために行なう独立したひとつの仕事の2通りがある。
復元修理の中で行なわれる作業は、スポット溶接シーラーの利用、シーリング剤の塗布、溶接部周辺の袋構造部内側への防錆剤吹き付けなどである。「溶接しているから錆が出るのは当たり前」と言わず、溶接していてもできるだけ錆は出さない方向で仕事を進めたい。外観は塗装で処理できるが、内側はそうもいかないので、サービスホールや基準穴ななどを利用して、専用の防錆塗料をしっかり吹き込んでおく。
独立した仕事の方は、いわゆる<防錆処理システム>を用いられることが多い。 これは塗料数種類、塗装用のスプレー機器、作業手順マニュアルなどがワンセットになっていて、特殊な技術の取得や長期の講習などは受けなくても、誰でも作業できることになっている。ひとつの製品として市販されているものもあるが、集客方法や接客などのノウハウを含むフライチャンズ方式として販売されているシステムも少なくない。
ぼかし スポット補修で、境目を目立たなくするために、補修部から旧塗膜にかけて薄く塗り広げること。仮に完璧に調色したとしても、塗装の境目がくっきり出ていれば上手な補修とは言えない。逆に調色はそこそこでも、うまくぼかしがしてあると、補修部はほとんど目立たなくなる。
ぼかしはなるべく狭い範囲で行なうのが上策。部位によってはプレスラインや水平面垂直面の切り替えなど、色が違って見えても自然な場所を利用することもできる。
ぼかし作業は、スプレーガンで円を描くように徐々に塗装面からの距離を離し、塗膜が自然に薄くなるように吹き付ける。塗料はそれまでに吹いていたものよりシンナーを多めにし、場合によってはクリヤーで薄める。メタリックやパール塗装では、着色層とクリヤーの2回ぼか しが必要である。ただしフッソや耐スリ傷性のクリヤーは、ぼかさないでブロック塗りする。
塗料は一定の厚みの塗膜を作らないと所定の性能を発揮しない。ぼかし部はこの原則に反して、非常に薄い塗膜となるため、前もってコンパウンドでていねいに足付けし、塗料の密着力を上げておく。旧塗膜上になじませるためには、やや遅めのシンナーを使うという手もある。また<ぼかし剤>も利用されるが、これは遅めのシンナーが主成分になっている。
補色 混ぜ合わせると灰色になるような色の関係のこと。例えば赤と青緑、黄と青紫、オレンジと青などである。調色で、ある特定の色味が強すぎるときは、その色の補色関係にある原色を追加すると、色味を抑えることができる。
マルチコート塗装 塗膜は、基本的には厚いほど光沢もよくなる。しかし1度に厚く塗ろうとしても限界がある。そこで、新車塗装では様々な方法で分厚くて深みのある光沢を持つ塗膜が作られている。
一般的な車種では、下塗り、中塗り、上塗りの3工程で新車塗膜が作られる。3回塗って3回焼付けするから3コート(塗装)3ベーク(焼付け)となる。これに上塗りと共色の中塗りを追加して、表面の平滑さと色の深みを出しているのが<4コート4ベーク>である。また、メタリックやパール塗装など、上にクリヤーをかける上塗りは、着色層を塗ってクリヤーかけて、それから焼付けする2コート1ベークだが、その後に中研ぎを挟んでさらにクリヤーかけた塗装もある。さらに、着色層+クリヤーを2回重ねるなど、各社の上級車種を中心� �、いくつかの方法が採用されている。
この手の塗装をひとまとめにしてマルチコート塗装と呼ぶ。マルチコートの回数の呼び方は、メーカーによって下塗りや中塗りを数えたり数えなかったりで、特にきちんとした決まりはない。
ミスト 微粒化されて霧状になった塗料のこと。スプレーガンから出て塗装面にたどり着くまでの間はミストになっている。狭い意味では、マスキングに付着したり、ブース内で舞っているような、塗装面にたどり着かない塗料粒子をミストまたは<スプレーダスト>と呼ぶ場合もある。だからたいていの塗装はミストを吹き付けているわけだが、特に<ミストコート>と呼んだ場合、それはぼかし作業でぼかし吹きした部分(塗膜にならずにミストの状態のままくっついている感じなのか)をなじませるために、遅めのシンナーやぼかし剤を吹き付ける作業のことを指している。
密着不良 塗膜と塗膜、塗膜とパネル面の密着力が悪いと、苦労して作った塗膜も、シールやステッカーのように端からぺりぺりとはがれてしまう。塗装直後は大丈夫でも、密着力が弱けれ、ば本来なら何事もなく済んでしまうようなわずかな錆や跳ね石などで塗膜がはがれる。その結果、<はがれ>や<ピーリング>と呼ばれる塗膜トラブルになる。塗膜の密着力を確保するためには、ていねいな清掃と足付け研磨が欠かせない。
ムラ取り メタリックやパールの着色層の仕上げで、下地の色が完全に見えなくなった後、ムラになっている部分を修正する吹き付け工程。ムラなくきれいに吹き付けできていれば必要ないが、着色部の吹き付けの仕上げ工程である。ぼかし塗装をする場合は、ムラ取りとぼかしを同時に行なうことが多い。
メタリック塗装 着色顔料とアルミ顔料を混ぜた着色層をまず塗装し、そのうえにクリヤーを重ねてあるボデーカラー。きらきらした金属的な輝きを得ることができる。着色層または着色層に塗る塗料(ネタ)は<メタリックエナメル>と呼ばれる。
アルミ顔料は、ごく薄いアルミの小片で、<メタリック顔料>とも呼ばれる。小さなものは千分の2〜3o、大きなものなら10分の1o程度の直径で、形はギザギザしたものから滑らかなものまで様々で、これらの組み合わせによって金属光沢の見え方を調整している。この金属光沢の見え方がいわゆる<メタリック感>になり、一般的に直径の大きいアルミ片を使ったものほどキラキラした輝きになり、形状が滑らかなものほど白っぽい光沢を持つ。
アルミ顔料は、大きさや形状別で、クリヤー� �混ぜられた形で塗料缶に収められている。これは<メタリックベース>またはメタリック原色と呼ばれる。全く同じ形状や大きさのアルミ片ばかり集められているわけではなく、ある特定のメタリックベースに含まれるアルミ顔料の大きさや形状には幅がある。粗目とか細目などの名称は、一番多い比率で含むアルミ顔料で表わされる。
メタリック塗装では、アルミ顔料の並び方が塗装の出来映えに影響する。アルミ顔料が同じ方向を向いてきれいに並べば、アルミ顔料に当たった光が直接目に入る角度から見ると、よりキラキラ感の強い明るい塗色となる。ただし別の角度からでは暗めになる。これがメタリック塗装の正面とすかしである。通常、正面が明るくなればすかしは暗くなり、正面が暗いとすかしは明るくなる傾向を持� ��。
メタリックが均一に並ばないで、部分的に固まったようになるのが<メタリックムラ>である。メタリックムラには吹き付けのテクニックが悪くて生じる<吹きムラ>と、クリヤーを塗ったときに、クリヤーの溶剤がメタリックエナメルを溶かしてアルミを動かす<戻しムラ>の2通りある。吹きムラは、スプレーガンの扱いに慣れれば減らすことはできるが、戻りムラはクリヤーの厚みやフラッシュオフタイムの長さなどが関係し、ベテランでも時には犠牲となる。しかし塗料そのものも改良され、吹きムラや戻りムラが起きにくくなっている。メタリック層とクリヤーで塗料の性質を変えている、いわゆる2Kタイプの塗料もそのひとつである。
ゆず肌 柑橘類の皮の表面のように、小さく緩やかなデコボコ状になった塗膜の肌のこと。<オレンジピール>、<みかん肌>など、呼び方は色々ある。本来新車の焼き付け塗膜は、軽いゆず肌になっているもので、ツルツルの肌は補修塗装に禁物とされていたが、塗料や塗装方法の改良などで、新車塗装の肌はツルツルの鏡面肌に近くなっており、補修側でもそれに合わせる必要がある。肌の状態が旧塗膜と合っている限りは問題ないが、極端にひどい場合は欠陥である。原因はシンナーの乾燥が早すぎる、粘度が高すぎる、吹き付け時の雰囲気温度が高すぎるなど。
ワレ 塗膜が劣化して、表面がひび割れたようになった状態。長期間戸外にさらされていると、いずれはそうなるものだが、現在の自動車用塗料を使って、2〜3年程度でワレが生じるようなら、塗装作業に何らかの欠陥があったと言える。ワレに程度によっていくつかの言葉があり、髪の毛のような細いワレを<ヘヤークラック>、細かな浅いワレを<チェッキング>、深いワレを<クラッキング>などと呼んでいる。
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