- 神戸市企画調整局情報化推進部
主幹(電子市役所担当)
広瀬裕一氏
ハード面の情報セキュリティ対策に加え、
コンプライアンス確立に不可欠なSAM構築
神戸市の情報セキュリティマネジメントへの取り組みは、2003年の情報セキュリティポリシーの策定からスタートしている。その後、「電子市役所」を推進するためのITサービスマネジメントの一環として、職員認証基盤の構築やPC統合管理システムの実現に着手。2008年には、情報セキュリティポリシーを全面改正し監査や自己点検を実施するなど、自治体としては極めて先駆的な取り組みを行ってきた。
神戸市が目指した「電子市役所」とは、市民や事業者に対する窓口手続きの電子化はもちろんのこと、決裁・文書管理、財務会計など全庁内のすべての業務を対象とした事務処理システムを構築し、効率的な行政運営を実現しようとするものだ。そのためには、ネットワークの増強とPC端末環境の整備が必要となる。同市では現在、約8,000台の一般事務処理用PCと約3,000台の専用PCが配置されている。すべての一般事務処理用PCをネットワーク化して集中管理し、同時に職員がPCを起動する際には職員証とパスワード認証を必要とするなど、情報セキュリティマネジメントを強化したのだ。
当時の取り組みについて、情報化推進部の広瀬氏は次のように振り返る。「情報セキュリティへの取り組みは、当初は不正パケット対策から始まりました。その後、不正操作対策、情報漏洩対策、コンプライアンス対策と、対応すべき課題が次第に幅広くなっていったのです。こうした変化のなかで、職員認証基盤の構築、ネットワークの増強、ハード・ソフト両面にわたるPCの統合管理は、避けては通れない課題でした」。
こうしてハード・インフラ面でのPC統合管理に一定のメドをつけた神戸市にとって、よりコンプライアンス確立を図るための次の課題となったのが、ソフトウェア資産管理(SAM)だった。2008年当時の状況認識について、広瀬氏は「民間企業でさえ、企業の社会的責任として内部統制、コンプライアンスなどが問われているのが今の時代です。まして公共セクターである神戸市はより厳格になる必要があるという認識を、市長をはじめとして早くからもっていました。違法コピーを防止し、著作権を保護するソフトウェア資産管理に取り組むことで、行政におけるコンプライアンスを確立していくことを全庁的に目指したわけです」と語る。
ハードウェア管理からライセンス管理まで構成管理や変更管理を一元的に行うためには、SAMが不可欠になる。SAMの対象資産であるハードウェアやライセンスの調達から設置、インストール、更新、アンインストール、廃棄までのサイクルを適切に管理することで、情報セキュリティだけでなく、コンプライアンスも維持・強化され、IT投資全体が有効なものになり、ひいては行政組織の信頼性を高めることにもなる。こうした認識に基づいて、神戸市のSAMへの取り組みが始まったのである。
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